個人再生とは、借金を減額する手続きです。
将来に発生する利息をカットして、借金の元本を最大で90%減らすことができます。残った借金を3年から5年で返済すれば、減らした借金は免除されます。
自分が住んでいる家や所有している車は個人再生の対象から外すことができるので、家や車を残したまま、他の借金だけを減らすことができます。
個人再生をした後は、あらたに借金をすることが難しくなるなどのデメリットもありますが、正しく個人再生をすれば、終わりの見えない借金の生活から解放されます。
この記事では、個人再生のデメリット・メリットと個人再生で気をつけるべき注意点を解説します。
個人再生のデメリット
信用情報機関に事故情報が登録される
個人再生をすると、信用情報機関に5年から10年のあいだ異動情報(ブラックリスト)が登録されます。
ブラックリストに登録されているあいだは、
- クレジットカードの利用・新規作成ができなくなる
- ローンの申し込みができなくなる
- 保証人・連帯保証人になることができなくなる
- 携帯電話の分割購入ができなくなる
といった、生活への影響があります。
官報に掲載される
官報は、政府が発行する新聞のようなもので、法律や裁判の内容などを公開するものです。
個人の名前や住所などが掲載されることがありますが、官報を日常的に確認する会社でないかぎり、個人再生の手続きが他の人に知られることはほとんどありません。
債権者を選ぶことができない
個人再生は、自己破産のように法的に債務を整理する手続きです。
個人再生では、すべての債権者に対して整理をおこなう必要があります。一方、任意整理は、自分で選んだ債権者だけに対して整理をおこなうことができます。
例えば、車のローンや保証人がいる奨学金、親子間の借金、友人間の借金、勤務先からの借金などは任意整理で除外することができますが、個人再生ではそれらを含めて手続きをおこなう必要があります。
ただし、住宅ローンは、住宅ローン特則によって手続きから外すことが認められる場合があります。
ローンを返済中のものは手元に残せない
個人再生をおこなうと、ローンを支払っている財産をすべて失う可能性があります。
特に、自動車ローンを支払っている場合は、車はローン会社に回収される可能性があります。これは、自動車ローンを支払中には車の所有権はローン会社にあるためです。
一方で、ローンをすべて完済している場合は車の所有権は自分にあるので、車を手元に残しておくことができます。
個人再生を検討する際は、このようなローンの支払いの有無にも注意が必要です。
保証人・連帯保証人に返済義務が移る
個人再生は、対象にする債権者を選ぶことができないので、奨学金などの保証人がついている借金も対象にする必要があります。
司法書士や弁護士が債務整理の手続きを開始する旨が書かれた「受任通知」を債権者に送ったときや、裁判所で個人再生の手続きが始まったとき、債権者は保証人や連帯保証人に借金の返済を求めます。
保証人や連帯保証人は、原則的に分割払いが認められず、残金全額を一括で払うことになります。
手続きにかかる費用が高い
個人再生にかかる費用は50万〜70万円程度です。
個人再生にかかる費用は、裁判所費用や弁護士費用に分かれています。
項目 | 費用の相場 |
---|---|
裁判所費用 | 20万円程度〜 |
弁護士費用 | 50万円程度 |
手続きに必要な出費が高いので、借金に苦しんでいる状況では注意が必要です。
手続きに時間がかかる
個人再生の手続きにかかる期間は、裁判所によって違うので具体的な期間を決めることはできませんが、手続きが複雑なので時間がかかります。
例えば、東京地方裁判所の場合、手続きが開始されてから再生計画が承認されるまでに4か月~6か月程度かかります。弁護士に相談や書類作成の時間も含めると半年から1年かかることもあります。
専門家に依頼しないで、自力で個人再生をおこなう場合はさらに時間がかかります。
個人再生のメリット
借金を最大10分の1に減額できる
個人再生をおこなう場合、借金の総額に対して必ず返済する最低額が定められています。
この最低額に応じて、借金の元本を最大で10分の1に減額することができます。
借金総額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 全額 |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1500万円未満 | 借金総額の5分の1 |
1500万円以上3000万円未満 | 300万円 |
3000万円以上5000万円未満 | 借金総額の10分の1 |
住宅ローン返済中の住宅を残すことができる
個人再生には、住宅ローン特則という制度があります。
住宅ローン特則を利用することで、自宅購入時にかかった住宅ローンを個人再生の対象から除外することができ、自宅を残したまま他の借金を減額することができます。
ローンを完済した車を残すことができる
個人再生をおこなっても、自動車ローンを完済していれば車を残すことができます。
しかし、ローンを返済中の場合はローン会社に車を回収される可能性が高いので注意が必要です。ただ、ローン返済中でも車の所有権を持っているなど、特別な条件を満たせば車を手元に残せる可能性もあります。
財産の処分する必要がない
個人再生をおこなっても高価な資産を処分する必要はありません。
ただし、最低返済額を下げるために不要な財産を適切に処分するべきです。
ギャンブルが原因の借金でも手続きできる
個人再生では、借金の原因によらず手続きをすることができます。
自己破産の場合は、ギャンブルや浪費が原因の借金は免責不許可事由とみなされ、完全に借金を消し去ることができない可能性があります。
しかし、個人再生であれば競馬・競艇・パチンコなどのギャンブルや株取引・FXなどの投資や、趣味や娯楽の借金であっても手続きができます。
職業の制限がない
個人再生には、職業や資格に関する制限がありません。
自己破産では一部の職業について制限があり、復権までにそれらの職業に従事できないません。
個人再生は、自己破産に比べるとより多くの人が利用しやすい制度といえます。
個人再生で気をつけるべき注意点
虚偽の申告をしない
個人再生の申請時に、虚偽の申告をすることは絶対に避けるべきです。
虚偽の申告が見つかった場合は、免責が認められなくなるだけでなく、詐欺破産罪に問われる可能性があります。
所有財産を記載する財産目録は自己申告ベースで作成することができますが、意図的に財産を省略することは避けましょう。
再生計画案の提出期限を守る
個人再生の手続きにおいて、債務者は一般的に裁判所が設定した期限内に再生計画を提出する必要があります。これは、民事再生法の163条1項によって規定されています。
ただし、特別な事情があった場合、例えば債務者との協議が難航し提出期限内に間に合わない場合など、裁判所へ提出期限の伸長申し立てが可能ですが、必ずしも受理される保証はありません。
そのため、できるかぎり期限内に提出するように努力することが大切です。
特定の債権者を優先して返済しない
個人再生は、債権者の平等性を保つことが原則です。
そのため、債権者との関係や借金の額に応じて返済の優先順位を決めてはいけません。
特定の債権者に対し優先的に借金を返済することを「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼び、裁判所はこれを免責不許可事由としています。