
任意整理って何?



どうやって手続きするの?
任意整理とは、借金の返済期間を長くして、毎月の返済金額を少なくする手続きです。
任意整理にはメリットがありますがデメリットもあって、ブラックリストに載ることがあります。しかし、返済ができなくて延滞してしまうと、結局ブラックリストに載ってしまい、給料が差し押さえられることもあります。
毎月の返済が苦しい場合は、いち早く任意整理するほうが良いです。安心して手続きできるように、任意整理について詳しく説明します。
任意整理とは?
任意整理とは、借金を返済する際に貸金業者と直接交渉する方法です。任意整理をすることで、将来利息を取り除き、返済期間を長くすることができ、毎月の返済額を少なくすることができます。
また、任意整理をする際に過払い金があるかどうかも確認することができ、過払い金があった場合は、取り戻せた過払い金を借金の返済に充てることで毎月の支払い額を大幅に減らすことができます。
任意整理と債務整理の違い
債務整理は、借金を減らすための4つの手続きの総称です。任意整理、特定調停、個人再生、自己破産の4種類があり、任意整理は借金を減らす債務整理のひとつです。
任意整理と、個人再生、自己再生、特定調停の違いは、借金を減額する際に行う手続きと減らせる借金の金額に大きな違いがあります。
任意整理は、今後支払う予定の利息をカットしながら返済期間を引き延ばすことで、毎月の返済額を減らすことができます。具体的な返済内容は、貸金業者と直接交渉をして決めていきます。
特定調停も任意整理と同様に、今後支払う予定の利息をカットしながら返済期間を引き延ばすことで、毎月の返済額を減らすことができます。ただし、任意整理とは違い、裁判所を通して交渉する必要があります。
個人再生は、今後支払う予定の利息をカットしながら借金を最大90%減らせる手続きで、自己破産は借金をゼロにする手続きです。この2種類は裁判所を通して交渉しなければいけない手続きのため、任意整理とは違う手続きであることが言えます。
他にも、手続きにかかる費用や、手続きが完了するまでの期間が債務整理の手続きによってそれぞれ違います。
任意整理と過払い金請求の違い
過払い金請求は債務整理とは違う手続きで、任意整理と同じように貸金業者と直接交渉して過払った分を返金をする方法です。
任意整理と過払い金請求の違いは、発生している過払い金が残りの借金より多いかどうかです。もし過払い金が残りの借金より多い場合は過払い金請求をするだけで借金を完済することができて、借金の返済に充てられなかった余剰分については現金として取り戻すことができます。
一方で、過払い金が残りの借金より少ない場合は任意整理をして借金を減らすことになります。
過払い金請求と任意整理は、それぞれの手続きによって減額できる金額やデメリット、費用、手続きの期間などが異なります。
任意整理のデメリット・メリット
任意整理をすることでどのようなデメリットがあるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
任意整理をするとできなくなることはいくつかありますが、一般的に生活に大きな支障をきたすような変化はなく、借金問題を解決に大きく近づけるメリットが得られます。
任意整理のデメリット
ブラックリストに載る可能性がある
任意整理をするとブラックリストに載る可能性があり、ブラックリストに載ると、一定の期間、車を買ったり、住居を借りたりするために必要なローンを組めなくなる可能性があります。また、携帯電話の本体代を分割して支払うこともできなくなる可能性があります。
信用情報機関はJICC(株式会社日本信用情報機構)、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、KSC(全国銀行個人信用情報センター)の3つの機関があり、「任意整理をした」という事故情報が記録されるのはJICCのみです。
ただし、CIC・KSCでは、保証会社によって代位弁済が行われた場合は、代位弁済として事故情報が記録されます。結果として任意整理以外の項目でブラックリストに載せられることが多いです。
事故情報は、他の金融機関にも共有されるため、任意整理後は、クレジットカードの新規作成や継続利用ができなくなる、他のローンの審査にも通らなくなる、連帯保証人になれなくなる、携帯の分割払いができなくなる可能性があります。
任意整理のメリット
家族や会社にバレない
任意整理は本人(本人の代理)と貸金業者との和解交渉を行う手続きのため、一般的に家族や会社が巻き込まれることはありません。
しかし、「自宅に電話が来て家族がとってしまう」「書類が自宅に届き、家族が開封してしまう」「任意整理後に借金を滞納してしまった」「弁護士・司法書士費用を滞納した」などのケースでバレてしまう可能性があります。
スムーズに手続きをすれば問題は起こらないので、周囲にバレないようにしっかりと手続きしましょう。
毎月の返済額が減って負担が軽くなる
任意整理をすると、今後支払う利息がなくなり、返済期間が長くなって、月々の返済額が少なくなり、負担が軽くなるメリットがあります。
また、任意整理する前に、返済が遅れて遅延損害金が発生している場合でも、任意整理することで遅延損害金の支払いが免除されることができます。
任意整理で誤解されていること
任意整理は、債務整理の中の一つであり、自己破産と混同されがちです。しかし、任意整理は自己破産とは異なります。任意整理について多くの人が誤解していることもあるので、詳しく説明します。
任意整理できない職業がある
任意整理には職業の制限はありません。これは自己破産には職業制限があることによる誤解ですが、任意整理は職業関係なく手続きできます。
任意整理をすると財産を失う
家や自動車を担保にしている借金を任意整理した場合、失ってしまうケースがあります。しかし、担保にしている借金を除いて任意整理をすることで、財産を残したまま借金を減らすことができます。
任意整理は手間がかかる
任意整理は、手間がかからない手続きです。弁護士や司法書士に依頼すると手続きのほとんどを代理でしてくれるので、手間をかけずに借金を減らすことができます。
任意整理の流れと手続きにかかる期間
任意整理を弁護士や司法書士に依頼すると、およそ2〜4ヶ月で貸金業者から合意を得ることができます。合意するまでの手続きのほとんどは依頼した弁護士・司法書士に任せられます。
任意整理の手続きをした後は、貸金業者と合意した契約に基づいて3~5年かけて借金を返済することになります。
STEP1 弁護士または司法書士に相談・依頼
債務整理を取り扱っている弁護士や司法書士に相談します。返済状況を説明して、任意整理で借金を返済できることが確認できたら、正式に依頼をします。
STEP2 貸金業者に受任通知が発送される
任意整理を依頼したら、弁護士・司法書士が貸金業者に受任通知を送付します。受任通知が貸金業者に届いたら返済の督促が止まりますが、依頼した即日に止まることもあれば、3日で止まることもあります。
STEP3 取引履歴の開示請求
弁護士・司法書士が各貸金業者から借りた金額や返済状況を知るために、「取引履歴」を開示を要求します。
取引履歴には、いつ、いくら借りたのか、いつ、いくら返済したのかなどの借入状況や返済状況が記録された資料であり、開示請求をしてから1週間から1ヶ月程度で取引履歴を入手することができます。
STEP4 引き直し計算をして過払い金請求
貸金業者から取引履歴を受け取れたら、過払い金がいくらあったかを計算します。過払いがあった場合は、貸金業者に対して過払い金請求を行います。
STEP5 貸金業者と直接交渉
残りの借金の返済内容について貸金業者と直接交渉します。交渉した内容について合意ができた場合に和解契約を結びます。交渉から和解までには大体1-2ヶ月かかります。
STEP6 和解できない場合は裁判
もし貸金業者との交渉で和解に至らなかった場合、裁判になる可能性があります。任意整理における裁判では、裁判上での和解によって解決します。裁判で和解するまでには半年程度の時間がかかることが多いです。
STEP7 新たな条件で返済開始
合意あるいは裁判で両者が合意した支払い条件に基づいて返済をしていきます。
任意整理で必要な書類
- 身分証明賞
- 借入先のローンカード
- クレジットカード
- 契約書
- 利用明細書
- 引き落としの通帳
- 振込証
任意整理は用意するべき書類が少ない手続きで、身分証明書や印鑑だけあれば、弁護士や司法書士に依頼することができます。
しかし、現在までに借り入れをした貸金業者を特定できなければ任意整理を始めることができません。カードや明細書などの資料を集めるか、記憶を掘り返して思い出す必要があります。
訴訟になった場合は、裁判所に提出するための書類を別途求められる可能性があります。
任意整理にかかる費用
任意整理は裁判所を経由せずに借金を整理できる方法で、手続きにかかる費用は少なく、主に書類の送付費用くらいです。司法書士や弁護士に依頼すると費用はかかりますが、借金を減額し、月々の返済額も軽減できます。
また、任意整理によって返済が止まるので、以前から返済に充てていたお金で費用を支払えば問題ありません。 一見すると費用がかかるように見えますが、借金を減らせる点を考慮すると経済的にも大きなメリットを得られることが多いです。
費用名目 | 費用の相場 |
相談料 | 0円~1万円 |
着手金 | 1社あたり2万円~5万円 |
基本報酬 | 1社あたり2万円~5万円 |
減額報酬 | 減額した金額の10% |
相談時にかかる相談料の相場
任意整理をする前に、弁護士や司法書士に相談することができます。相談料は、多くの事務所で「無料」になっています。ただし、「30分だけの無料相談」や「1時間あたりの有料相談」もあるので、相談する前には事務所で設定されている相談料を確認しておくようにしましょう。
依頼時にかかる着手金の相場
任意整理を専門家に依頼すると、「着手金」と「報酬金」という2つの費用が発生します。着手金の相場は1社あたり2万円から5万円程度です。着手金は任意整理する貸金業者の数によって変動して、例えば5社の任意整理を依頼すると、10万円から25万円程度の費用がかかります。
着手金が無料の事務所もありますが、その分、報酬金が相場よりも高かったり、別途手数料がかかったりする可能性もあります。事務所に依頼すると総額いくらかかるのかを依頼する前に確認するべきです。
任意整理後にかかる報酬金の相場
任意整理は、相手業者と合意することで借金を減らす方法です。合意ができた場合、報酬金として1社につき約2万円程度がかかります。ただ、過払い金が発生している場合や元本を減らせる場合は追加の報酬がかかることもあります。
その他、事務所で設けられている返済代行サービスを利用する場合は手数料がかかります。また、訴訟になった場合には追加の費用がかかることもあります。
任意整理できる条件
任意整理は、貸金業者と直接交渉して返済条件を変更する方法で、貸金業者が合意しなければ手続きができません。任意整理できる条件は3つあり、それぞれ詳しく説明します。
安定した収入源がある
任意整理をするためには、3年から5年間、毎月定期的に返済をすることが求められます。そのため、毎月安定した収入があることが条件となります。職業が不安定や無職の場合は、貸金業者から承認を受けるのが難しくなる可能性があります。
3年~5年で完済できる返済能力がある
任意整理をしたら借金を3年から5年の間に分割して返済することになります。 通常は36回から60回に分けて返済するため、 任意整理をするには毎月返済できる状況である必要があります。
長期的に返済する意思がある
任意整理をするためには、将来にわたって返済を継続する意思を貸金業者に示す必要があります。
過去に何度も滞納したり、返済日までにしっかり返済できない傾向が強かったり、あるいは何度も任意整理を繰り返したりしている場合、貸金業者が返済意思を認めてくれないため、任意整理できない可能性があります。
任意整理に向いている人と向いていない人
任意整理に向いている人
抱えている借金が少額
少額の借金を抱えている方は任意整理で解決しやすいと言えるので、債務整理の中でもデメリットの少ない任意整理がおすすめです。
手間をかけずに任意整理したい
任意整理は裁判所を通さない手続きのため、手続きにかかる手間や労力はかかりません。手軽に借金を減らしたい方は任意整理をするべきです。
財産を手放したくない
任意整理では財産を失わずに借金を減らすことができます。たとえ住宅ローン、車のローンが返済中であっても、任意整理する借金から除外することで、預金や保険、家や字動作などの財産を残すことができます。
借金していることを家族にバレたくない
任意整理は、裁判所を介さずに貸金業者と直接交渉する手続きです。弁護士や司法書士に依頼すると、貸金業者と直接やり取りする必要がなくなるので、借金していることを家族にバレるリスクが低くなります。
任意整理に向いていない人
多額の借金を抱えている
任意整理は将来の利息をカットして返済引き延ばすことで毎月の返済額を減らせますが、借金の元本を減らす手続きではありません。
多額の借金を抱えている場合は、任意整理での解決は難しくなるため向いていないと言えます。
収入源がない、安定していない
任意整理後は長期にわたって毎月返済を続ける必要があります。安定した収入がなければ返済を継続できないので任意整理に向いていないと言えます
借金の金利が低い
任意整理は今後支払う予定の利息をカットできる手続きですが、金利1%程度のローンの場合、減額できる金額が少なくなり、返済額がほとんど変わりません。このような借金には任意整理は向いていません。
よくある質問
- 任意整理はどんな手続き?
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任意整理は、貸金業者やクレジットカード会社と交渉して、金利の引き下げや返済期間の延長(通常3~5年)を実現し、毎月の返済を無理なく行えるようにする手続きです。
和解合意に至った返済計画をもとに、任意整理前よりも楽に返済ができます。任意整理の条件について詳しく知りたい場合は「任意整理できる条件」を参照してください。
- 任意整理にかかる期間はどれくらい?
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任意整理を弁護士や司法書士に依頼すると、2か月〜4か月程度で貸金業者から合意を得ることが可能です。合意までの手続きは依頼した弁護士・司法書士がほとんどおこなってくれます。
任意整理は用意するべき書類が少なく、書類と身分証明書や印鑑だけあれば、弁護士や司法書士に依頼ができます。任意整理に必要な書類についてはは「任意整理で必要な書類」をご覧ください。
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