「滞納や延滞した借金を過払い金請求することができるのか?」といった質問がよくあります。過払い金とは、貸金業者から借りたお金を返す際に法律上の上限を超えて支払った金額のことです。
過払い金は、利息をイメージすることが多いですが、延滞利息(遅延損害金)についても同様に法律上の上限を超えて支払った場合には返還を請求することができます。
また、滞納や延滞があっても過払い金請求は可能です。 法律で定められた利率を超えて遅延損害金を支払っている場合には、過払い金を取り戻すことができます。
ただし、貸金業者が主張する過払い金よりも少なくなったり、過払い金請求を断られる可能性があるので、過払い金請求に関する注意点を確認して正しい方法で請求することが大切です。
延滞・滞納した借金の過払い金請求する方法
遅延損害金の過払い金も算出
延滞・滞納した借金の過払い金請求について、借金の返済を延滞・滞納したことがあっても100%過払い金が発生しないわけではありません。
過払い金請求は払い過ぎた利息を返還することであり、借金の延滞・滞納は過払い金の発生とはまったく関係がありません。
借金を延滞・滞納したことを引け目に感じる必要はなく、過払い金請求の前提条件は法律の上限金利を超えて返済しているかどうかです。
利息制限法によって、元本に応じた上限金利が定められているので、それに基づいて過払い金請求をおこなうことができます。
元本 | 上限金利 | 2010年までの上限金利 |
---|---|---|
10万円未満 | 20% | 29.2% |
10万円以上100万円未満 | 18% | 26.28% |
100万円以上 | 15% | 21.9% |
借金の返済を延滞・滞納した場合の過払い金の計算
借金を延滞・滞納した場合には、貸金業者から取引履歴を取り寄せて、借り入れを開始した時の金利や、借り入れ金額、返済した金額、返済日など取引の内容を詳細に確認することができます。
取引履歴を取り寄せる方法は業者によって違いますが、電話、FAX、郵送などで取り寄せたり、貸金業者の窓口で受け取ることができ、取引履歴を取り寄せたら過払い金の引き直し計算をすることができます。
遅延損害金を当時の遅延損害金利率よりも高い金額で支払っていた場合、過払い金に上乗せして請求することができます。もし、遅延損害金が当時の遅延損害金利率内であれば、遅延損害金を含めないで過払い金を計算します。
ただし、一括返済を要求された場合などには、遅延損害金を考慮して引き直し計算をする必要があります。
過払い金の計算を間違えてしまうと、過払い金の返還額が少なくなったり、過払い金請求を断られたりする可能性があるので、貸金業者から取引履歴を取り寄せて、過払い金計算をする前に正確な情報を確認することが大切です。
貸金業者が取引履歴を開示してくれない、自分では引き直し計算の仕方がよく分からない、という方は司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
滞納や延滞をした借金を過払い金請求するときの注意点
債務者と貸金業者で違った主張
貸金業者の中には、徴収していたお金が一括返済に応じなかった遅延損害金であって利息ではなく、過払い金請求はできないと主張する業者も存在します。
このような場合には、過払い金が減額されるので、貸金業者の主張が通ってしまえば遅延損害金率を超えた利息に対して過払い金請求ができなくなります。
また、1度でも返済を延滞・滞納した場合、貸金業者に損害を与え続けているとして、支払う金利は遅延損害金利率で計算されると主張して過払い金を計算する貸金業者があります。
そのため、債務者は、利息制限法で定められた上限金利(15%~20%)以上を支払った金額を過払い金として請求しますが、貸金業者は遅延損害金利率の上限(21.9%~29.2%)以上を支払った金額を過払い金として主張します。
遅延損害金利率の上限と利息制限法で定められた上限金利の差額分、債務者と貸金業者の主張が違うことになります。お互いの主張が違って、どちらも主張を曲げない場合は裁判をすることになります。
裁判を避けるためにも、貸金業者から取引履歴を取り寄せて、引き直し計算をすることが大切です。
滞納しても督促や取り立てがない借金で過払い金が発生している可能性
借金の返済が滞ったからといって、必ずしも遅延損害金や違約金が発生するとは限りません。実際、長期間にわたって借金を滞納していても、貸金業者から連絡がこなくなることが珍しくありません。
債務者に対して繰り返し督促や取り立てをおこなうと、債務者が司法書士・弁護士に相談して過払い金が発生していることに気づかれてしまう可能性があります。
債務者が過払い金が発生していることに気づかずに時効を迎えてしまえば、貸金業者としては過払い金請求をされる心配がなくなります。
もし、借金を滞納していても長期間にわたって貸金業者から連絡を受けていない場合は、司法書士や弁護士といった専門家に相談をして、過払い金が発生していないか調査するべきでしょう。
返済中の過払い金請求でブラックリストに載る可能性
返済中の借金に対して過払い金請求をすると、ブラックリストに載るリスクがあります。
これは過払い金請求ではなく任意整理の扱いになるためです。
任意整理は、返済が苦しくなった人がとる債務整理の一種で、貸金業者と借金減額の交渉をすることです。個人再生や自己破産といった債務整理と違って、裁判所を通さずに和解交渉のみで解決を図る債務整理といわれています。
ただし、過払い金の返還額が予想したよりも少なく、借金を完済できないと任意整理となってブラックリストに載るリスクがあるので、過払い金請求をする場合は、過払い金請求の実績が豊富な司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
過払い金請求ができなくなる可能性
過払い金請求には時効があります。最後に取引した日から10年をすぎると時効が成立して、過払い金を取り戻すことができなくなります。
また、貸金業者の経営状態が悪化すると返還される過払い金の額が減ってしまうことや、貸金業者が倒産してしまうと、過払い金請求ができなくなります。そのため、過払い金が発生しているか確認して、取り戻すチャンスを逃さないようにすることが大切です。
延滞や滞納をした借金の過払い金請求は専門家に相談
過払い金請求は自分ですることもできますが、過払い金が返ってくるまでに時間がかかったり、返ってくる金額が少なくなったりすることがあります。
借金の延滞や滞納をしていると、延滞や滞納を理由にして過払い金請求を断られる可能性もあるので、司法書士や弁護士といった専門家に依頼することをおすすめします。
ブラックリストに載っている場合、過払い金請求をすることで借金を減らすことができる可能性があるので、過払い金の調査や計算をして、過払い金で借金を減らすことができるか確認するべきです。過払い金が多ければ借金を完済して、余ったお金が手元に返ってくる可能性もあります。
ただし、過払い金請求には10年の時効があり、時効が成立すると過払い金を取り戻せなくなります。また、貸金業者の経営状況によっては過払い金が少なくなったり、倒産して過払い金請求ができなくなる可能性もあります。
過払い金を1日でもはやく、1円でも多く取り戻すために、過払い金請求を専門的に扱っている司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。